リア充視点のラブコメという珍しい設定
ラブコメ系のラノベでは、なぜか陰キャ主人公のモノローグ(独白)が多い。
陽キャのリア充も登場しますが、あくまで陰キャ側の引き立て役がメインの役割。
このラノベは、リア充視点で物語を展開させている点が珍しく、斬新です。
男子高校生の千歳朔(ちとせさく)を中心としたリア充仲間たちの紹介、およびその活躍を描いているラノベ「千歳くんはラムネ瓶のなか」。
2022年3月現在、6巻まで発売されている人気シリーズです。
リア充視点なんて書くと、「自分は目立ちたくないから、陽キャやリア充は遠い存在・・」と思っている人は、読む前から尻込みするかもしれません。
でも、読んでいるうちにリア充たちが身近に感じられるようになります。
確かに主人公の「上から目線」発言も多々ありますが、なぜか嫌みには感じられず、私は気楽に楽しめました。
イラストの女の子たちも可愛いし、おすすめ出来るラノベです。
リア充の実態
このラノベ「千歳くんはラムネ瓶のなか」(第一巻)を読むと、外見だけ良くてもリア充のモテキャラになれる訳ではないことが分かります。
当たり前の話ですけどね。
物語中のリア充たちは、相手を気遣い、会話を通してみんなと仲良くなり、楽しい毎日を送れるよう努力しています。
リア充の人間関係が豊かで多様性に富んだものとなっているのは、あくまで結果。
勉強、運動、身だしなみに対する継続的努力も怠りません。
しかし、リア充たちは目立つ存在がゆえに、羨望だけでなく嫉妬の対象ともなります。
学校でトップカーストに属することで受けられる恩恵の他、裏サイトでの陰口などという「報酬」も得られます。
それでも、出る杭は打たれるに負けずに努力を続けるのがリア充という存在なのだと理解しました。
リア充の活躍
「千歳くんはラムネ瓶のなか」(第一巻)でのリア充たちは、その活躍を通して他者を助けるという役割を担っています。
新学期でのクラス委員選考、席順決めなどでは、クラス内で議論をリードしています。
軽妙で機知に富んだ言葉のキャッチボールでクラスの雰囲気を和らげ、笑いを取り、非リア達の敵意を削ぐ様子は見事。
誰も差別することなく、異なる立場の者と相互理解することへの努力を惜しまない。
この姿勢は学生だけでなく、社会人も見習うべきでしょう。
特に、リア充筆頭格の千歳朔(ちとせさく)が、クラス内の長期引きこもり男子の問題を解決するプロセスは見事。
ネガティブな陰キャ思考だった彼の家を訪問し、やる気を起こさせ、再登校させます。
その後のサポートも親身に行い、リア充グループに紹介し、外見改良とコミュ力向上を実現。
引きこもりになった原因は失恋ですが、そのリベンジへの指南と助太刀・・・
真のリア充とは、他人に尽くすことを厭わない人なのかと思いました。
次のような意味合いのセリフもとても印象的でした。
「悪意のあるマウントは敵しか作らないが、愛のあるイジリは親密さを増す」
「弱い自分と向き合える人は、強い人間に変われる」
リア充の葛藤
「千歳くんはラムネ瓶のなか」(第二巻)では、リア充グループのヒロインの一人である七瀬悠月がクローズアップされています。
自分の目立つ外見が周囲の羨望や嫉妬を引き起こし、それに悩まされてきた七瀬悠月。
そのため八方美人の仮面を被り、表面的なソーシャルスキルで面倒ごとを小器用に回避してきた七瀬悠月。
しかし、その「知恵」は決して万能ではなく、かえって事態を悪化させることも・・
第二巻ではストーカーの気配を察した七瀬悠月が、千歳朔に彼氏のフリをしてほしいと依頼するところから始まります。
でも、その嘘が周囲に誤解を与え、かえってストーカー被害に拍車をかけることに・・
千歳朔を中心にストーカー問題解決に動く過程で、七瀬悠月は様々なことに気づきます。
- 自分の弱さや本音を出すことの大切さ
- 自分の素を出さないと信頼関係は築けない
- 周囲の目を気にしすぎると、自分自身が空っぽになってしまう
彼女は自分の課題に気づき、行動し、そして変わることが出来ました。
周囲への迷惑など、代償はかなり大きかったけど・・
恋愛未経験の彼女ですが、恋愛のための精神的素地を作ることも出来たようです。
私は第三巻も読みました。
一つ学年が上の先輩お姉さんの進路問題がテーマですが、詳しくは述べません。
大人と渡り合い、結果的に清々しいラストを迎えた時の読後感は爽やか。
是非とも読んでみてくださいね。
「千歳くんはラムネ瓶のなか」から学べること
引っ込み思案で奥手で人見知りの人は、日頃、リア充と接点がないかもしれません。
例えば自分を変えて恋人を作りたいと思っていても、なかなかキッカケがなく、ついつい楽な方に流されて、陰キャ体質・非モテ体質から抜け出せない。
私もかつてそうでしたから、気持ちは良く分かります。
しかし、ただ待っていても何も変わりません。
何でもいいから行動を起こして、経験値を積み重ねてPDCAを回すしか、自分を変える方法はないのです。
そのためのきっかけとして、このラノベ「千歳くんはラムネ瓶のなか」は打ってつけでしょう。
気楽にリア充思考を楽しみ、自分がこれからをどうすべきか考える際の参考になるのではないでしょうか。
純粋にラブコメとして楽しむのもアリですが、それだけでは勿体ない。
自分の行動様式を変容させるために生かしてほしいと思います。
最後に、「千歳くんはラムネ瓶のなか」の主人公:千歳朔のセリフを引用して、この記事を終わります。
「『美しく生きられないのなら、 死んでいるのとたいした違いはない』。これが俺の美学だ。それに従った結果として、無責任な他人にナルシストだと嘲笑われようが、うとまれようが、叩かれようが、いっこうに構わない。本当に怖れるべきなのは、いつか自分で自分を嫌いになってしまうことさ」
以上